歯周病のお話
歯周病とはどんな病気
歯周病とは「歯の土台が破壊され、歯を失う病気」です
これに対して虫歯は「歯そのものが破壊され失う病気」といえます。
虫歯(齲蝕)も歯周病も細菌により起こります。細菌は、歯の表面や、歯肉についたプラーク(歯垢、歯苔)の中にいます。両方とも歯を失うことに変わりありませんが、歯周病が進行すると歯の土台に致命傷を与え、入れ歯やインプラント等の処置が難しくなります。
歯茎も痩せて、周辺の健康な歯や治療中の歯にも悪影響を与えることになります。口の中が取り返しのつかない状態になる恐ろしい病気なのです。
そのうえ、統計的に見ても歯周病によって4割もの歯が失われています。歯周病にも程度と症状はいろいろです。日常の歯のケアを怠っていると、歯周病の原因となるプラーク(歯垢、歯苔)が繁殖して、歯石(歯周病原菌の温床)が歯に付着します。この状態では自覚症状がありません。ですが、立派な歯周病の予備軍です。
「リンゴをかじると血がでませんか?」というフレーズを覚えている方もいらっしゃると思います。
歯ぐきから血が出る状態は、初期から中程度の進行具合です。まだ歯肉炎(歯茎にの症状がでる)の状態です。このまま進むと歯がグラグラして歯周組織(セメント質、歯根膜や歯槽骨など)が破壊される歯周炎となります。
お口の中の健康はこのようにして保たれています
皆さんのお口の中は、健康な状態であってもごくわずかな細菌が存在しています。
人体には、もともと細菌の活動に抵抗する力があり、歯肉溝(接合上皮)の部分には、白血球、マクロファージ、リンパ球が移動してきます。そして細菌と戦う準備をします。これが免疫の働きです。
このように人体には防御機構が働いているのです。
当歯科医院では予防歯科にも力を入れております。まず、自分のお口の状態を把握しましょう。
歯科医院へは歯が痛くなる前にメンテナンスとして来ていただきたいと思います。
虫歯も(齲蝕)歯周病も細菌感染症です
虫歯(齲蝕)も歯周病も細菌により起こります。細菌は、歯の表面や、歯肉についたプラーク(歯垢、歯苔)の中にいます。
細菌の活動に対する抵抗力(生体の防御力)は人によって大きな差があり、虫歯(齲蝕)や歯周病になりやすい人と、なりにくい人がいるのは、そのためです。
バイオフィルムについて
ここでは簡単にバイオフィルムについて解説します。
バイオフィルムというのはさまざまな細菌が協力したり、拮抗したりして形成する共同生活体のことをいいます。
細菌はお互いに強固に結びついてキャンプを張って自分たちの生息している場所を形成しているので、簡単には取り除くことはできません。
バイオフィルムを除去するためには専門家の助けが必要になります。 以前はプラークと呼ばれていました。
歯根表面あるいは歯石の表面
※ 山本 浩正著 ペリオのためのバイオテクノロジーより 引用
歯周病はなぜなるのでしょう?
歯周病は、歯と歯肉のあいだ(歯肉縁下)に入った歯周病原菌によって起こります。
細菌の活動は、歯と歯肉の間の結合組織を徐々に壊し(付着の喪失の始まり)、すきま(歯周ポケット)を作ります。
このとき生体の防御力は、タバコやストレスなどの危険因子によって、大きく左右されます。
歯周病の初期の段階が歯肉炎で、炎症が深部組織(セメント質、歯周靱帯、歯槽骨)に進行したものが歯周炎です。
歯肉炎のはじまり
大部分の歯肉炎は健康な歯肉に回復します
口の中の細菌数が増えるにつれて、歯肉溝の部分に炎症症状が現れます。歯肉が赤く腫れ、出血が起こり、仮性ポケットが形成されます。これが歯肉炎です。
この段階で、病気に気付いて適切な治療を受ければ、大部分の歯肉炎は健康な歯肉に回復します。
歯肉炎の分類
◆大部分の歯肉炎細菌性プラークによる歯肉炎
(単純性歯肉炎)
◆その他の歯肉炎
1.ステロイドホルモンによる歯肉炎
2.薬剤の副作用による歯肉炎
3.急性壊死性潰瘍性歯肉炎 など
歯周炎の分類
こうなったら歯周炎
歯肉炎を放っておくと、歯と歯肉を結び付けている歯周靱帯(歯根膜)がこわされ(付着の喪失)、そこに歯周ポケットが形成されます。
続いて歯槽骨が吸収して歯がぐらぐらになり、(歯の動揺)、さらには歯周ポケットからうみが出るようになります。進行してしまった歯周炎は、治療して元通りの歯肉や歯槽骨の状態に戻すことはできません。
しかし、患者さんと歯科医の努力によって、ある程度まで健康な状態を取り戻すことは可能です。
下の2枚はそのまま放置され、末期の歯周炎になった例です。このような状態まで進行してしまうと、抜かずに治療することはできません。
※ この症例写真は新潟市で開業されていた石井歯科 院長 石井正敏先生より提供していただきました。
もっと知りましょう歯周病のこと
犯人は歯周病原菌
歯周病には2つの感染経路があります。
(a)誰もが持っている内因性の細菌に、防御力の低下した時に日和見感染として発症する場合
(b)本来健康な人には存在しない細菌が、人から人へと感染して発症する場合
若年性歯周炎の原因菌とされる アクチノバチルス菌 A.a.(Actinobacillus actinomycetemcomitans)という菌は、思春期の頃両親から感染します。
また、ポルフィロモナスジンジバーリス菌 P.g.(Porphyromonas gingivalis)という菌は、感染するためには最低10数年の接触が必要とされています。
P.g.菌には夫婦間の感染もあることが報告されています。
歯周病そのものは遺伝するものではありませんが、家庭環境や歯周病を進行させやすい素因の存在は無視できません。
家族全体の診査や治療が必要なのは、このような理由によるものです。
症状が重くなる場合の2パターン
■非常に病原性の強い細菌に感染した場合
タバコも吸わず、糖尿病のような全身性疾患もなく、生体の抵抗力も特に低くないのに、歯周炎になる場合があります。
通常の抵抗力を上回る非常に強い細菌に感染した場合です。侵襲性歯周炎(あるいは早期発現型歯周炎)はこれにあたります。
■抵抗力がきわめて低い場合
だれでも持っているような細菌でも、重い歯周炎を引き起こすことがあります。
身体や歯周組織の抵抗力が、他の人より低くなっている場合です。
その原因となるものを危険因子(リスクファクター)といいます。
危険因子には遺伝的危険因子、環境的、後天的危険因子があります。
歯周病の進行を止めるには
歯周病の進行を停止させるためには、まずプラークをできる限り取り除き(プラーク・コントロール)、歯周病原菌を少なくさせなくてはなりません。
同時に患者さんの局所的、全身的な危険因子を取り除いたり、改善することによって、生体の防御力を強めることも必要です。
毎日の生活リズムを規則正しく、ストレスの少ない生活環境をつくることも大切です。
ストレスが多いと唾液の分泌量が減少し、その結果、唾液中の免疫物質S-IgAが十分働かなくなるからです。
十分な唾液の分泌は、う蝕や歯周病の予防に重要な役割を果たし、口腔の健康の維持増進に大きく影響します。
S-IgAは口腔という局所免疫に関与していますが、全身的な免疫システムが生体の防御という役割を担っているのです。